(1)連結部材、取付け部が損傷しない制震装置(制震装置BRD)
(特許第5475847号

1.BRD制震装置は図-1に示すように、座屈拘束低降伏点鋼とスライド装置からできています。
いずれも鋼製品であり、粘性体より耐久性にも優れており、他の橋梁鋼部材と同様な耐久性を有しています。

brd
                    図-1 BRDの構造

2. 座屈拘束低降伏点鋼は橋に作用する地震力を大幅に軽減します。
以下ののリンクをご覧ください。


①座屈拘束低降伏点鋼の特徴

3.
スライド装置は座屈拘束低降伏点鋼が、常時の温度変化、クリープ、乾燥収縮及び
レベル1地震動で桁の移動を妨げないために設けます。
またレベル2地震後、座屈拘束低降伏点鋼の残留変形を吸収し、橋梁が地震前の位置に
戻るようにします。

スライド装置には以下のリンクに示すように様々な重要な役割があります。

② スライド装置の役割


4.座屈拘束低降伏点鋼の残留変形については以下のリンクに記載してあります。

③座屈拘束低降伏点鋼により発生する構造物の残留変形

5. BRDは橋の固有周期に関係なく、高い減衰性能を発揮します。
つまり高い減衰性能を発揮するのに、周波数依存性がない、または振動数依存性がありません。
詳しくは以下のリンクをご覧ください。


④BRDと粘性ダンパーの減衰性能比較

6. BRDは動的繰返し試験により、その性能が確認されています。
詳しくは以下のリンクをご覧ください。

⑤動的繰返し試験


7.BRD制震装置の設計手順については以下のリンクに記載されています。

⑥BRD制震装置の設計手順

8.想定される適用橋梁
8-1 履歴減衰系の支承を有する橋梁
図-2に示すような履歴減衰系の
支承(LRB,高減衰ゴム)が塑性変形して減衰効果を発揮すると振動系の剛性は低下して
固有周期は長くなりその結果速度は遅くなります。したがって速度比例型の粘性減衰ダンパーは効きが低下します。

 ネクスコ設計要領橋梁保全編8章 4.免震構造化の設計(2023年10月)にも
(6)依存性が異なるエネルギー吸収装置は,同一振動系内では併用しないことを基本とする。
と記載されており,説明には
「エネルギー吸収装置の履歴には各種の依存性を有する場合がある。このため,異なる履歴特性を有する複数
のエネルギー吸収装置を併用した場合において,設計上の地震時応答の低減効果が得られるかどうかが検証され
ておらず,設計で想定する耐震性を損なう恐れがある。したがって,同一振動系内では異なる履歴特性を有する
複数のエネルギー吸収装置を併用しないことが基本である。」
とあります。


LRB
               図-2 履歴減衰ダンパーと粘性ダンパー
制震装置BRDは履歴減衰系で,減衰は速度に依存しませんのでLRB支承や高減衰ゴム支承を有する橋梁にも適用できます。。


8-2 複数の地震動の周波数(振動数)に対して卓越モードがある橋(斜張橋,アーチ橋,高橋脚ラーメン橋など)
制震装置BRDは複数の卓越固有振動数に対して同様な減衰性能を発揮します。

8-3 多径間連続橋
図-3に示すようにBRDを可動部に設置することによりレベル2地震力による上部工慣性力を低減してから橋脚,基礎に作用する地震力を減少させます。。
したがって、レベル2地震に対して経済的な設計ができます。


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                              図-3 多径間連続橋の可動部にBRDを設置


9 一般社団法人 日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所
「座屈拘束型ダンパーガイドライン委員会運営業務報告書」(平成29年4月)
に詳しく記載されております。


10 使用実績

伊勢湾岸自動車道名港東大橋(斜張橋)


11 低降伏点鋼の繰返し荷重1回の場合は落橋防止装置となります。
以下のリンクに説明があります。

BRD落橋防止装置