①座屈拘束低降伏点鋼の特徴

1)座屈拘束低降伏点鋼とは図-1に示すような低降伏点鋼を図-2に示すように
座屈拘束材で拘束して図-3に示すように引張、圧縮ともに同様な軸力-軸方向変位履歴曲線
を描くようにした部材です。

2)低降伏点鋼は、通常の鋼材に比べ 降伏点が低く,降伏点のばらつきが
小さい上,伸び性能に優れているので,履歴形ダンパーに適しています。

3) 低降伏点鋼LY225とSS400の応力-ひずみ関係は図-1のようになります。
LY225は、応力値205~245N/mm
2の範囲内で必ず降伏するように
上限降伏強度が規定されていますので,BRDの取り付け部に想定外の力が
作用することなく,取付け部が破損することはありません。

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          図-1 LY225とSS400の応力-ひずみ関係    


4) 図 -1よりわかりますように、座屈拘束低降伏点鋼は上限強度に達した後も極めて大きな
じん性を有しており、破断しにくい特徴があります。

5) 座屈拘束低降伏点鋼は、図-2に示すように、引張力が芯材に作用する場合
は弾性限度を超えると降伏します。
圧縮力が芯材に作用した場合は、座屈拘束材の働きにより、高次モードの座屈となります。

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図-2 座屈拘束低降伏点鋼の仕組み

6) 実用上は、引張、圧縮ともに同様な軸力-軸方向変位履歴曲線を描きます。
その一例を図-3に示します.

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図-3 座屈拘束低降伏点鋼の軸力-軸方向変位履歴曲線

 地震時鋼材が降伏すると振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるので
振動は減衰します。座屈拘束低降伏点鋼は降伏荷重が小さいので、
図-3に示すように降伏領域が大きく大幅な減衰効果が得られます。
降伏領域が大きいと言うことは履歴曲線の囲む面積が大きいと言うことになります。

7) 熱エネルギーの変換度合は等価減衰定数で表され、座屈拘束低降伏点鋼の
等価減衰定数は55%程度になります。
鉛プラグ入り支承の等価減衰定数は15%程度ですから、その大きさが推測できます。
等価減衰定数については以下のリンクに説明がされています。

等価減衰定数

8) 座屈拘束低降伏点鋼は大きな減衰効果が得れる半面、図-3に示すように除荷時の残留変形も
大きくなります。つまり地震終了時、座屈拘束低降伏点鋼は当初の長さより短いかまたは長くなります。
座屈拘束低降伏点鋼のみを取り付けた構造物では地震終了後の形状は地震前と異なります。
このような不都合を防止するためBRDではスライド装置が取り付けられています。


9) 表-1は最大軸ひずみとひずみ硬化による耐力上昇率, 累積塑性変形倍率の関係を示しています。
最大軸ひずみが大きいほど破断までの回数が小さくなります。(参考文献1))
最大軸ひずみの繰り返し回数はタイプⅠの地震動では10回程度,タイプⅡでは1~3回程度なので最大軸ひずみは
それぞれ±2.0%,±3.0%~3.5%となるように座屈拘束低降伏点鋼の設計長を定めます。
なお落橋防止装置として使用する場合は繰り返し回数は考慮する必要はないので±3.5%となります。

        表-1 破断までの繰り返し回数の例
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参考文献    

1)一般社団法人 日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所
「座屈拘束型ダンパーガイドライン委員会運営業務報告書
(平成29年4月)