(2)連結部材、取付け部が破損しない落橋防止装置(BRD落橋防止装置)
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特許第5475847号

1) 熊本地震(2016.4.14,4.16)では落橋防止装置や制震装置の取付け部が損傷する事例が発生しました。

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熊本地震 南阿蘇大橋のダンパー取付部の破損(2016.4.27)

ネクスコ設計要領橋梁保全編8章8-5-2 落橋防止構造(2023年10月)には

「落橋防止構造の設計は,道示Ⅴ16.3,16.5によることを標準とし,破壊順序を検討の上,落橋防止構造の取
付部(支承部,桁部)が先行破壊しないことを確認しなければならない。」

「落橋防止構造本体の耐力が下部構造及び取付部の耐力に比べ過度に大きい場合は,設計上想定していない地震力が
作用した場合に下部構造や取付部に損傷が生じ,橋としての機能の速やかな回復が困難となることも予想されるため,例えば
落橋防止構造には耐力の上限値を考慮することが望ましい。なお、落橋防止構造に上限強度の規定がある材料を用いることで
上限値の設定が可能となる。

と記載されています。

2) BRD落橋防止装置は(1)制震装置BRDを落橋防止装置として使用したもので
以下に示すように上限強度が規定されている低降伏点鋼材を使用していますので
ネクスコ設計要領に準拠しています。
繰返し荷重を想定していないので低降伏点鋼の使用量が少なくなりダンパーに比べて経済的になります。
BRD落橋防止装置には次の2種類があります。

a) 引張り力と圧縮力に対応したものでは図-1に示すように落橋を防ぐだけでなく, 桁端がパラペットに衝突するのを
防ぎます。


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         図-1 BRD落橋防止装置(引張と圧縮に対応)

図-2に示すような桁端を連結するものでは座屈拘束低降伏点鋼の減衰効果により
桁端の衝突を防ぎ落橋を防止します。                  

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図-2 BRD落橋防止装置(引張と圧縮に対応)

メカニズムは①のリンクをご覧ください。

① BRD落橋防止装置のメカニズム

b) 引張力のみに対応したものは図-3に示すように低降伏点鋼材をPCストランドで連結したもので
2つのスライド区間を設けています。さらに経済的になります。

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   図-3 BRD落橋防止装置(引張のみに対応)

以下のリンクに詳しい説明があります。
BRD dual slide

3) 参考文献①によると図-4に示すようにPC鋼線を使用した落橋防止装置の実測の破断荷重は
規格値の引張強度より大幅に大きいことがわかっています。
またメーカーによりバラツキがあります。PC鋼線には上限強度の規定がないからです。
そのため取り付け部が破損して落橋する可能性があります。


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   図-4 PC鋼線落橋防止装置の一様引張試験

詳しくは
③のリンクをご覧ください。

③BRD落橋防止装置とPC鋼線落橋防止装置の比較


4) BRD落橋防止装置の使用実績

名古屋第二環状自動車道 飛島木場 Bランプ橋
名古屋第二環状自動車道 名古屋西JCT Dランプ橋
名古屋第二環状自動車道 名古屋西JCT Fランプ橋
名古屋第二環状自動車道 服部高架橋
常磐道 阿武隈大橋
名神長良川橋大規模更新工事

参考文献
①落橋防止構造に関する研究委員会平成15年度報告書,平成16年3月
(財)土木研究センター