⑩ 基礎-地盤系のモデル化

ⅰ)動的解析では基礎-地盤系は図-1に示すように換算ばね定数でモデル化します。

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 図-1 基礎-地盤系換算ばねモデル

ⅱ)精度の高い方法として図-2に示すような基礎-地盤系を有限要素法で
モデル化する方法があります。基礎-地盤系換算ばねモデルより精度の高い
方法です。


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図-2 基礎-地盤系有限要素法モデル

ⅲ) ⅰ)とⅱ)を比較すると,載荷試験から求めた変形係数をそのまま適用して
換算ばね定数を求めると柔らかめになることがわかります。

ⅳ)換算ばね定数を柔らかめに評価すると静的な設計では基礎は大きくなり安全側
になりますが動的解析では応答が実際より減少して危険側になることがあります。

ⅴ)第1の原因は,地震時の地盤のひずみレベルは10-4~10-3であるのに対して
載荷試験に基づく変形係数設定に用いるひずみレベルは10-2~10-1と地震時の
ひずみより大幅に大きいため換算地盤バネ定数が柔らかく評価されるからです。

ⅵ)第2の原因は基礎と地盤の接触面の地盤反力係数で基礎-地盤系をモデル化する
常時の基礎の設計法を踏襲して地盤換算ばねを設定しており,地震時基礎-地盤系の特徴
である基礎近辺地盤全体まで含めた基礎の動的挙動(例えば基礎と地盤の相互作用)
を考慮していないためと推定されます

ⅶ)基礎-地盤系を換算ばねでモデル化する場合,変形係数から求めた換算ばね定数
を数倍すると基礎-地盤系有限要素法モデルの応答を近似することができます。
詳しくは以下のリンクを参照ください。p85に説明があります。

角谷務 京都大学博士論文

ⅷ)1970年代に設計された橋は耐用年数50年を想定したものがあります。
鋼管杭基礎ではこれをもとに腐食代を1mmと設定したものがあります。
耐震補強を行う場合,設計震度も当時とは大幅に大きくなっており基礎の劣化状態
を考慮することが必要です。

ⅸ)橋脚をコンクリート巻き立て,鋼板巻き立てで耐震補強を行うとレベル2地震時
基礎に作用する曲げモーメントは橋脚の剛性が大きくなるため著しく増加する場合
があります。
基礎-地盤系の照査に塑性化を許容した場合,ⅷ)に留意することが必要です。

ⅹ)レベル2地震で基礎-地盤系が塑性化すると地震後残留変形が発生します。
基礎-地盤系の残留変形は復旧が大掛かりになることが多いので増し杭などで極力
残留変形を発生させないようにすることが賢明です。
中央分離帯,路肩などなど狭小なスペースでも鋼管矢板を用いて基礎の補強ができる
方法があります。
以下のリンクに記載されています。

中央分離帯に位置するロッキング橋脚基礎の耐震補強法(KD式狭小基礎補強法) 

メナーゼヒンジを有する壁式橋脚基礎の耐震補強法(KD式狭小基礎補強法)

ⅺ)橋脚に拘束効果を与えてじん性を増加させながら,かつ曲げモーメントを増加させない
工法に波形鋼板巻き立て工法があります。波形鋼板のアコーデオン効果を利用したものです。
詳しくは以下のリンクに記載されています。

波形鋼板による橋脚の耐震補強工法(KD巻立て工法)

ⅻ)可動支承を有する既存の橋台に制震装置または落橋防止装置を取り付けた場合,
上部工の地震時慣性力を考慮していないため,橋台が滑動または転倒する場合があります。
そのような場合,上部工の地震時慣性力をグラウンドアンカーで取る方法があります。
以下のリンクに記載されています。

橋台滑動防止装置(BRDアンカー)