(2) KDコネクター(特許第6499802号)による中空床板橋の補強法

1)図-1に示すように中空床板橋はボイド上面の鉄筋コンクリートの劣化が頻繁に見られます。
放置しておくと鉄筋が腐食し破断して床板陥没になりますので緊急の対策が必要です。

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        図-1中空床板橋のボイド上面の鉄筋コンクリートの劣化


2)これまでは劣化部分を除去してSFRCなどの高強度コンクリートを打設する方法が一般的でした。
この方法には以下の課題があります。
①SFRCなどの高強度コンクリートの施工では除去した面との付着強度をとるため接着剤が必要である。
接着剤が経年変化により劣化すると、水分が浸透し打設した高強度コンクリートが剥離する。
②劣化がボイドまで達していると適用できない。

3) 上記①,②の課題はKDコネクターによる中空床板の補強法で解決できます。
すなわち、図-2、図-3に示すように中空床板上に、繊維補強コンクリート(SFRC)層及びアスファルト層が順に形成された
舗装構造において、中空床板の上面に設置された鋼板上に複数のパーフォボンドリブ(PBL)が突設され、
このパーフォボンドリブは前記繊維補強コンクリート層に埋め込まれていることを特徴とする補強構造です。 


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            図-2 KDコネクターによる中空床板橋の補強(橋軸方向)


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             図-3 KDコネクターによる中空床板橋の補強(橋軸直角方向)


4) パーフォボンドリブは孔あき鋼板ジベルとも称され、鋼製のリブプレートに複数の孔が設けられています。
複数のパーフォボンドリブは橋軸方向に間隔をおいて配列され、鋼板に溶接により固着されています。


5) パーフォボンドリブは、孔を貫通する鋼繊維補強コンクリートによりコンクリートダウエル作用によりせん断抵抗
を示し、SFRC層のずれ止め機能を発揮します。接着剤のように劣化することはありません。

 
6) コンクリートに鉄筋のようなダウエル作用があることは以下の論文に記載されています.

ⅰ)
LeonhafdtF.Wolfhart,A,Hans-Peter,A.und Wolfgang,H.
Neues,Vorteilhaftes Verbundmittel fur
Stahlverbund-Tragwerke mit hoher Dauerfestigkeit
BETON UND STAHIBETONBAUpp325-331, 1987

ⅱ)
Zellner,
Recent designs of oomposite bridges and new
type of shear connectors,Composite Constrution in Steel andConcrete,
ASCE, pp.240-252, 1988.

ⅲ)
園田 恵一郎, 蛯名 貴之
パーフォボンドリブにおけるコンクリートのせん断強度特性に関する極限解析理論による考察
土木学会論文集, 2005

7) 床板防水の観点からSFRCは防水性能の優れたものを使用します。

8) 図-3に示すようにKDコネクター付き鋼板に底型枠付きのパーフォボンドリブを溶接します。
これをW-KDコネクターと称します。
W-KDコネクターは施工性を高めるために次のリンクに示すように分割パネルで配置します。

橋面上の分割パネルと注入孔

9) ボイド上部の劣化したコンクリート、腐食した鉄筋を除去したのち、設置時には性能上問題のない範囲で
既鉄筋を折り曲げW-KDコネクター設置後、既鉄筋はもとに戻します。

10) パーフォボンドリブに新鉄筋を貫通させ既鉄筋とラップさせます。

11) 除去した部分にコンクリートを注入し埋め戻します。注入孔は以下のリンクに説明されています。

橋面上の分割パネルと注入孔

12) 埋め戻しコンクリートの種類としてはSFRC,無収縮モルタル,超即硬コンクリートなど
現場工期に合わせて適切に選択します。

13) パーフォボンドリブは鋼板に対して補剛効果も有し、適切に配置することによってボイド上の
鉄筋コンクリートを補強することができ耐久性が向上します。