(3) 拡幅を想定していないPC床板橋を拡幅する際のPC鋼線連結方法(KDカプラー)
① コンクリート床版を用いた橋梁として、図-1(a)に示すような PC(プレストレストコンクリート)床版橋
があります。
PC床版は床版コンクリートに橋軸方向に50cm程度の間隔で多数のPC鋼材を埋設して、
橋軸直角方向にプレストレスを導入しております。
これらのPC鋼材の両端部は、床版コンクリートの両端部の定着部で定着されています。
図-1拡幅を想定していないPC床板橋の拡幅
② 上記のようなPC床版橋において、交通量の増大に対処すべく、例えば2車線から3車線に床版を
拡幅する場合、図-1 (b)に示すように、既設の床版コンクリートに新設の床版コンクリートを打ち継ぎます。
この場合、新設の床版コンクリートにもプレストレスを導入しないと、橋軸直角方向境界部に縦目地が発生し
車線変更時に段差が生じて危険です。すなわち、新設の床版コンクリートに埋設される新設のPC鋼材と、
既設のPC鋼材とを定着部で連結して、新設の床版コンクリートにもプレストレスを導入する必要かあります。
③ 将来の拡幅が予定されている場合は先行工区の定着部に何らの細工をして後に連結できるようにしておくことが
一般的ですが,予定していない場合の連結方法(カプラー)は以下の点に留意する必要があります。
ⅰ)PC鋼線の性能を道路橋示方書の規定通りに発揮させるためカプラーの全強はPC鋼線の規格最大試験力
よりも大きいこと。
ⅱ)PC床版は応力変動が大きく、既設のウェッジ定着体の疲労強度はそれ以上と考えられます。
したがってカプラーの疲労強度も既設のウェッジ定着体と同等以上の必要があります。
参考文献1)によればウェッジ定着体の疲労強度はおおむね以下の通りです。
したがってカプラーもこの疲労強度を満足する必要があります。
参考文献
1) 豊福俊泰,米田利博 「PC鋼より線の疲労強度」(日本道路公団試験所)
コンクリート工学,Vol.25,No.7,July,1987
したがってカプラーは以下のように設計すれば破断は鋼線で発生することが載荷試験で確認されています。
つまりカップラーはPuで損傷しません。
③-1 図-2に示すよに定着スリーブを切削してテーパーと環状溝を設けます。
図-2 定着スリーブにテーパーと環状溝を設ける
③-2 図-3に示すようにカップラーを圧入します。
カプラーには一方の端部内周に周方向の環状凸部が設けられ、また外周には
雄ねじが形成されています。カプラーは定着スリーブの外周に圧入され、定着スリーブの
先端部で環状凸部が環状溝に係合します。
なお、環状凸部には周方向引張応力(フープテンション)が発生するように径を設定し、
環状溝に密着するようにします。
図-3 カップラーの圧入
③-3 図-4に示すように、新設PC鋼材の先端部が連結されたスリーブをカプラーに連結します。
スリーブは、内周に雌ねじが形成され、また後端が閉鎖端となっています。
スリーブ内にはコンプレショングリップが収容されています。
図-4 新設PC鋼材との連結
③-4 新設PC鋼材は緊張され、既設床版コンクリートに打ち継がれる新設床版コンクリートに
プレストレスが導入されることとなります。
上記のようなPC鋼材の連結構造によれば、カプラーに設けられた環状凸部が
既設の定着スリーブの環状溝に係合しているので、新設PC鋼材に付与される緊張力は既設の
定着スリーブに確実に伝達され、定着スリーブから確実に緊張反力を得ることができます。
実際の製品説明は以下のリンクを御覧ください。
KDカプラー完成品説明図