(1)鋼床版と舗装を機械的に連結する鋼床版舗装構造(KDコネクター
(特許第6499802号


鋼床版舗装の問題点と課題

1) 鋼床版の舗装14には従来、グースアスファルト舗装が適用されてきましたが、近年、交通荷重時の
局部変形によってデッキプレート10とUリブ11(または縦リブ)の溶接部分等に疲労亀裂が発生するという
問題が生じています。

steel deck

       図-1 鋼床版舗装構造

2) このようなことから、既設鋼床版の疲労耐久性の向上を目的として、鋼床版補強用SFRC
舗装工法が提案され、実施されております。

3) この工法は、鋼床版上に接着剤を施した後、鋼繊維補強コンクリート(SFRC)を打ち継ぎ、
さらにその上に防水層を施してアスファルトを打ち継ぐ工法であります。


4) この工法によれば、鋼床版とSFRC舗装を一体化させることで剛性を付与し、主にデッキプレート
とUリブの溶接部の局部変形・応力の軽減を図り、疲労亀裂の発生・進展を抑制することができます。
また、グースアスファルト舗装と比べて感温性が小さいので、季節(気温)を問わず、床版の剛性が
確保できます。
 
5) しかしながら、SFRC舗装において、接着剤や防水層が経年変化により劣化すると、
SFRC舗装がデッキプレートから剥離して水分が浸透し鋼床版の腐蝕や舗装の劣化が発生するという
問題があります。

6) このようなSFRC舗装の剥離の問題を解決するために、鋼床版の上に複数のスタッドを設け、
それらの表面にエポキシ樹脂などの樹脂系塗膜材を塗布して防水層を形成し、その上にSFRC舗装を施す
工法が提案されております。

7) しかしながら、SFRC舗装におけるSFRC層は厚さが一般に40~50mm程度と薄く、したがってスタッドも
短くならざるを得ないのでその効果が小さく、SFRC舗装の剥離を確実に防止することは困難です。
ちなみに道路橋示方書にはスタッドの全高は150mm程度と規定されております。

8) 鋼床版橋は寒冷地において冬季路面が凍結しやすいことがわかっています。
SFRC舗装は保温性があり、路面凍結抑制効果があります。
詳しくは以下のリンクに記載されています。

鋼床版とコンクリート床板の温度比較

KDコネクターによる解決策

9) 図-2に示すようにデッキプレート10の上に、繊維補強コンクリート層16及びアスファルト層18が順に形成された
鋼床版舗装構造において、デッキプレートの上面に複数のパーフォボンドリブ(PBL)19が突設され、
このパーフォボンドリブは前記繊維補強コンクリート層に埋め込まれていることを特徴とする鋼床版舗装構造
です。 
                              
kdconnecter

            橋軸直角方向                           橋軸方向
                              図-2 KDコネクター

10) パーフォボンドリブ1 9は孔あき鋼板ジベルとも称され、鋼製のリブプレートに複数の孔20が設けられています。
複数のパーフォボンドリブ1 9はUリブ1 1の延伸方向と同方向に間隔をおいて配列され、デッキプレート1 0に
溶接により固着されています。


11) パーフォボンドリブ1 9は、孔20を貫通する鋼繊維補強コンクリートによりコンクリートダウエル作用によりせん断抵抗
を示し、SFRC層1 6のずれ止め機能を発揮します。

12) したがって、接着剤層1 5や防水層1 7に経年劣化が生じてもS FRC層1 6がデッキプレート10から容易に剥離することは
ありません。
それゆえ、鋼床版の剛性が低下することがなく、その劣化を防止することができます。

 
13) コンクリートに鉄筋のようなダウエル作用があることは以下の論文に記載されています.

ⅰ)
LeonhafdtF.Wolfhart,A,Hans-Peter,A.und Wolfgang,H.
Neues,Vorteilhaftes Verbundmittel fur
Stahlverbund-Tragwerke mit hoher Dauerfestigkeit
BETON UND STAHIBETONBAUpp325-331, 1987

ⅱ)
Zellner,
Recent designs of oomposite bridges and new
type of shear connectors,Composite Constrution in Steel andConcrete,
ASCE, pp.240-252, 1988.

ⅲ)
園田 恵一郎, 蛯名 貴之
パーフォボンドリブにおけるコンクリートのせん断強度特性に関する極限解析理論による考察
土木学会論文集, 2005